ノーマライゼーション・教育ネットワーク 会員通信2020年秋号
【代表】新井淑則 【事務局】岩井隆
〔ホームページ〕 URL:http://www.japan-normalization.com/
連絡先〈 郵便 〉〒344-0041 埼玉県春日部市増富763-1 飯島気付
〈 電話 〉090―2441―0938(岩井)
〈メール〉rsj78162@nifty.com(宮城)
2020年度第23回定期総会、無念の開催断念!
事務局長 岩井隆
残念なお知らせ
会員通信の前号(2020年夏号)でご案内をいたしました本年度の定期総会は残念ながら、中止という判断をせざるを得なくなりました。その原因は言わずと知れた新型コロナウィルスによる感染症の蔓延です。一昨年も台風の急襲のためにやはり定期総会を中止したことがありました。人間の力では抗いようもない自然のなせることであり、仕方がないという一面もありますが、実に残念な思いです。
首都圏を少し離れた地で
5月末に「緊急事態宣言」が撤回されると、コロナによる影響もだんだんと小さくなり8月の頃には定期総会の開催は可能だろうと考えていました。感染者数が最も多い東京を離れた栃木県の小山市であれば、なおさらのこと開催の可能性は高いと判断していました。これまでに教育ネットが定期総会を開いてきたのは、東京・神奈川の首都圏でした。それも、東京都北区と国立市にある障害者スポーツセンターという東京都の2つの施設を主に会場としてきました。今回、栃木県小山市での開催を計画したのは、コロナへの対応のように受け止められた向きもあるかと存じます。が、実は小山市での開催を計画し始めたのは昨年(2019年)の晩秋のことなのです。もちろん教育ネット事務局でコロナウィルスの発生・伝播・感染拡大などを予知・予想していた訳ではありません。
実はオリンピックへの対応策
首都圏を離れた地での開催を考えたのは、東京五輪への対策でした。五輪が開催されると、国内・外国からの観客が首都圏にあふれ、五輪会場周辺は雑踏や交通規制も予想されます。更には宿泊施設の料金が高騰し、また予約ができない事態もあり得ることです。そこで、五輪会場から離れた地での開催を計画するに至った次第です。
栃木県小山市は穴場だった
小山市は栃木県といっても大宮駅からはJR宇都宮線で40~50分という距離であり、鉄道の要所になっています。また、手頃な料金の温泉宿があり、総会を開催できる広さの会場のある市営の公共施設が数カ所あります。そして、本会の会計を長年務めてこられた会員のOさんが住む地であり、総会開催の便宜を図ってもらえるという力添えも期待できました。
コロナウィルスへの対応策として小山市が再浮上
今春になると「五輪延期」が決定され、総会会場を東京都内に設定し直すことも考えられましたが、今度はコロナの感染リスクが心配です。それを考慮すれば、小山市での開催が賢明な策だと判断しました。「緊急事態宣言」前後の3月~6月は月1回開いている事務局の会議もできずに、ようやく7月5日の事務局会議で「小山市開催」を最終確認し、総会の最終準備に取りかかりました。ところが皮肉なことにこの日辺りからコロナ感染者が増え始めたのです。
無念の断念
総会の10日ほど前、7月21日には総会資料の「議案書」の印刷・製本を終え、あとは総会当日を待つばかりです。が、世情はコロナの感染者数が急増し、総会当日の集合場所に設定した大宮駅の周辺が埼玉県での感染者多発地となっています。また、小山市においてもクラスターが発生したという情報も入ってきます。私たちも何らかの対応を考えざるをえなくなりました。総会準備が完了したこの7月21日に事務局員の総意で「総会中止」という苦渋の選択をしました。そして翌週の7月28日には緊急連絡として「総会中止のお知らせ」を会員宛に郵便とメールで送りました。総会参加を予定していた会員の方にはご迷惑をかけてしまいました。この7月下旬~8月上旬がコロナ感染の1つのピークであり、中止の判断は英断、最良の選択だったと今は振り返っています。
私たちはこうして半年以上にわたった準備を放棄して、コロナの脅威というリスクを回避してきました。信じられないことに、私たちが苦渋の選択をした翌7月22日に「GO TO トラベル」の開始が決定されました。コロナ禍を終息させるどころか、拡大・潜在化が進む愚策が続くようではお先が真っ暗と言わざるを得ません。
来年度に向けて
来年=2021年度こそは定期総会を多くの会員参加のもと、開催したいと望んでいます。しかし、コロナウィルスの感染状況・医薬品やワクチンの開発がどのようになっているのかは、全く予断を許しません。また、東京五輪の開催も現時点では未知数です。
そのような中でリスクを最小限に抑えて定期総会を開催するとなれば、小山市での開催が選択肢の1つとして挙がってくるかも知れません。ノーマライゼーション・教育ネットワークの活動を活性化するためにも、2021年度は定期総会の開催を実現していきたいと考えます。
2020年度定期総会議案書の採決報告
2020年7月29日に、会員25名の方に議案書、ハガキを郵送しました。(メールでの方含む)
ア 投票数について
郵送による投票数(9) メールによる投票数(4)
8月29日定例会の参加(5) 合計18
イ 有効投票数 上記18
ウ 投票数の確認
A 賛成します(18) B 反対します(0)
C 修正案があります(0)
D その他(0)
エ 有効投票数の過半数の賛成を持って可決=承認とあり、議案書は可決されました。
尚、議案書の内容について、ご意見、質問はなく、ハガキで4名、メールで1名の方から、感想がありました
(飯島)
資料 「○○○○○○」
下に掲載する資料は、文部科学省が2019年 月に公開した文書です。開催を見送った第23回定期総会に併せて行う講演会で講師の指田忠司さんが資料として用いる予定だったものです。文科省の障害のある教師の雇用や働き方などのこれからの方向性が表出し、教育ネットの今後の活動にも大きな関わりがあるものと思われます。ご一読ください
文部科学省 障害者活躍推進プラン ⑥
障害のある人が教師等として活躍することを推進する
~教育委員会における障害者雇用推進プラン~
担当:総合教育政策局教育人材政策課
1 趣旨
昨年、公務部門における障害者雇用の不適切な計上が社会問題となり、各機 関における障害者雇用の状況が精査された結果、都道府県等の教育委員会における障害者雇用の状況は、都道府県の機関に比べて不十分なものとなっている。
この要因の一つに、都道府県等の教育委員会における雇用の大部分を占めている、教師の障害者雇用が進んでいないことが考えられる。
児童生徒等にとって、障害のある教師等が身近にいることは、
①障害のある人に対する知識が深まる
②障害のある児童生徒等にとってのロールモデルとなる
などの教育的効果が期待されるところである【*1】。
さらに、新しい学習指導要領において対話的な学びの実現が求められる中、障害のある教師等との対話は、児童生徒等にとって、共生社会に関する自己の 考えを広げ深める重要な教育資源となることも期待される。
こうしたことも含め、学校現場において障害のある教師等がいることは、いわゆる「隠れたカリキュラム」【*2】となりうるものであり、教育委員会における障 害者雇用を積極的に意義付けて、取組を推進することが適当である。
2 現状
○ 平成30年6月1日現在、都道府県等の教育委員会における障害者雇用(法定 雇用率:2.4%)の状況は、実雇用率が 1.90%、法定雇用率達成機関の割合が 43.3% であるなど、不十分なものとなっている。【*3】
○ 教育委員会における雇用障害者の内訳は必ずしも明らかではないが、一部の 自治体が明らかにしている例によると、教員の雇用率は 1%程度、そのうち、小 学校は 0.4%強、中学校は 0.8%程度、高等学校は 1.3%強、特別支援学校は 3.7%強となっている。【*4】
○ 教員免許状取得者のうち障害者である者は、平成29年度に大学等における直 接養成により取得した者のうち 168 名となっている【*5】。
○ 平成30年度に実施した公立学校教員採用試験の実施状況については、68自治体中 67の自治体において、障害のある者を対象とした特別の選考を実施している。また、平成 30年度に採用された障害のある者は 51人となっている。【*6】
3 具体的方策と進め方
教育委員会における障害者雇用を推進する観点から、当面、以下の取組を推進 する。
また、現在、中央教育審議会では、「新しい時代の初等中等教育の在り方につい て」審議する中で、質の高い教師を確保し、資質向上を図るための養成・免許・採 用・研修・勤務環境・人事計画等の在り方等について検討いただいており、この中 で障害のある教師も含めた幅広い人材が活躍できる環境整備の議論を深める。
さ らに、障害のある教師が実際に学校で活躍する姿を関係者が広く共有できるよう な事例の紹介を併せて進める。
① 教師に係る障害者雇用の実態把握【2019年度】
教師に係る障害者雇用については、教職課程のある大学等への入学から、大学 等における養成、教師採用、入職後の合理的配慮に至るまで、総合的に検討を要 する課題である。それぞれの段階における課題を明らかにし、全体として効果的 な取組を推進するため、教師に係る障害者雇用の実態把握を行う。
② 教職課程における障害のある学生の支援【2019年度~2020年度】
障害者である者の教員免許状の取得状況を踏まえると、そもそも大学等における教職課程で学ぶ障害のある学生の数が多くないことが考えられる。障害のある者が教職課程で学ぶことに障壁を感じる要因と対策を共有するため、教職課程における障害のある学生の支援について好事例を収集し、発信する。
その際、教職課程特有の事柄として教育実習があり、ここが一つの大きなネックになっているとの指摘もある。教育実習は、入職後の成否を占う意味でも大変重要であり、大学等及び教育委員会が緊密に連携を図るとともに、責任を共有して、教育実習に行きにくいことが教職への志望を低下させる要因となることがないよう、教育実習時の支援の在り方について検討を深める。
③ 教員採用試験の改善【2019 年度】
教員採用試験については、既に各自治体において特別の選考の実施など、様々 な取組が行われているところであるが、障害者雇用促進法や障害者差別解消法の 趣旨も踏まえ、更なる改善を図っていく必要がある。 特に、受験資格について「自力通勤可能」「介助者不要」などの要件を課すこと は採用試験における合理的配慮の在り方を踏まえれば不適切であると考えられ、 具体的に指導していく【*7】。
④ 入職後の合理的配慮【2019 年度~2020 年度】
障害者が継続的に教師として働き、また、働き続けられる職業として定着するためには、入職後において適切な合理的配慮が提供される必要がある。具体的には、障害者である教師に対する相談支援体制の構築、教師としての業務を支援するためのスタッフの配置、人事異動における配慮等が考えられ、これらの配慮事 項に着眼して好事例を収集し、発信する。
一方で、心身の発達段階が未熟な子供への安全配慮や、小学校における一人の教師が全教科を教えることを前提とした学級担任制など、教師という職業の特殊性を踏まえると、障害のある教師が他の教師と同様に働くことに、一部困難が生じることも考えられる。このため、障害のある教師や学校の実態を踏まえ、学級担任だけでなく、専科や副担任を受け持つことなど、障害のある教師が働きやすい持続可能な体制を検討していく必要がある。
⑤ 障害のある教師が働きやすい環境整備【2019 年度~順次】
障害のある教師が働きやすい環境を整備する観点からも、学校施設のバリアフ リー化や情報通信環境の整備を図ることは重要である。これらの取組は子供たち や障害のない教師にとっての学校環境整備と不可分なものであるが、障害のある 教師のための勤務環境の整備や上述の教育的効果の最大化といった観点も踏まえ、継続的に取組を推進する。
⑥ 教師以外の職員の障害者雇用の推進【2019 年度~2020 年度】
学校には教師のほか事務職員、用務員等の職員がおり、これらの者に障害者が雇用されることも、前述の教育的効果が期待されるものである。また、教育委員会全体としての障害者雇用の改善を図るためには、学校以外の教育関係機関の職員、教育委員会事務局の職員も含めた改善が必要である。こうした観点を踏まえ、教師以外の職員の障害者雇用についても好事例を収集し、発信する。
【脚注欄】
【*1】 「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推 進」(平成 24 年 7 月 30 日中央教育審議会初等中等教育分科会報告)参照。
【*2】 教育する側が意図する、しないに関わらず、学校生活を営む中で、児童生徒自らが学びと っていく全ての事柄。
【*3】 平成30年 国の機関等における障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省)
【*4】1 埼玉県教育委員会における障害者雇用の推進方策について(最終報告)(平成 31 年 2 月 14 日障害者雇用推進委員会)
【*5】2 文部科学省調べ。
【*6】 文部科学省調べ。
【*7】 平成 30 年度に実施した教員採用試験において 68自治体中 34の自治体においてそのような受験資格を設定している。(文部科学省調べ)
コ ロ ナ 禍 の 学 校 と 授 業 と 教 員 と
新型コロナウィルスは日本社会いや全世界に大きな影響を及ぼしています。私たちが勤務する学校現場にも予想のつかない忍苦や困難をもたらしてきました。教室の状態・授業の形態・学校行事など変化を余儀なくされたものも多数に上ります。そして個々の児童生徒、教職員にも大きな影響をもたらしています。これは、現職の会員からのルポやレポートです。
★コロナ禍の学校現場 (特別支援学校)★
(文責:内沼ひろみ)
~コロナウイルスの出現から感染拡大へ~
1月 6日 中国 武漢で原因不明の肺炎 厚労省が注意喚起
1月14日 WHO 新型コロナウイルスを確認
1月16日 日本国内で初めて感染確認
1月30日 WHO「国際的な緊急事態」を宣言
2月 3日 乗客の感染が確認されたクルーズ船 横浜港に入港
2月13日 国内で初めて感染者死亡
2月24日 国の専門家会議が見解「今後1~2週間が瀬戸際」
【2月27日 安倍首相 全国すべての小中高校に臨時休校要請】
毎日のようにニュースになっていた『感染』について、漠然とした大きな不安を持ち続けながら、手探りで日々の学校生活を続けていたところに突然の要請だった。
2月27日は木曜日で、臨時休業要請期間は3月2日の月曜日から春休みに入るまでとなっていた。「え?じゃあ、あと1日だけで今年度を終わらせるの?」「通知表はどうするの?」「卒業式はできるの?」「入学式は?」 とにかく、あまりに突然で唖然とした。その後、教育委員会から、様々な影響が大きい特別支援学校については、埼玉県ではこれまでと同様、当面授業を継続すると現場に伝えられ、感染リスクをできるだけ避けながら3月19日金曜日までの通常登校が実施された(本来は24日まで)。卒業式は、本人、保護者(2名まで)、担任のみで、縮小した形で行われた。
この通常登校については、感染防止という観点から言えば矛盾しているように思われたが、まったく予想していなかった長期の臨時休校は、日常的に特別な支援や医療的ケアを必要としている児童生徒を持つ保護者にとっては、かなりの負担になるだろうことも十分に考えられたので、個人的には妥当な措置だったのではないかと思う。ただし、児童生徒の障害の状態などから、感染リスクを避けたいと保護者が判断して登校しない場合は、欠席ではなく出席停止措置(コロナ感染予防の為)の扱いとなったので、実際には保護者の判断で登校しない児童生徒もいた。
この頃は、学校現場における感染防止に対する「ガイドライン」がまだはっきりと示されておらず、一般的に注意喚起されていることを踏まえながら、学校ごとに手立てをとっていた状況だった。しかし、介護や医療現場と同じく、特別支援学校では“ソーシャルディスタンス”を取ることは非常に難しく、接触や近距離での支援は避けられないのが現実だ。「もし、感染させてしまったらどうしよう・・命にかかわる・・・」という不安を常に持ちながらの毎日だった。そして、その思いは以後ずっと続くことになる。
【4月7日 7都道府県に 『緊急事態宣言』 (人との接触7~8割削減を)】
少し早く春休みに入ったが、日本国内では都市部を中心に感染者が急増し、クラスターと呼ばれる集団感染が次々と報告され、医療現場がひっ迫してきた状況の中、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡に「緊急事態宣言」が出され、16日には対象が全国に拡大された。そして、この宣言を受けて臨時休校の期間が5月6日まで延長されることになった。唐突に出された前回の「全国一斉臨時休校要請」に続き、今回も4月7日という新年度のスタートする日の宣言だった。特別支援学校については、家庭での受け入れ準備等に配慮して10日まで開校可能とされたが、私の勤務校では、7日の午前中に放送による短時間の始業式を行い、以降は臨時休業になり、翌日に予定されていた入学式は本人、保護者(2名まで)、担任のみの参加で短時間実施された。臨時休校期間中、学習支援や健康観察等の観点から、万全な感染予防対策を徹底した上で、学部ごとに 登校日を週に1回設けることとされ、通常日課では15時下校だが、給食を提供して13時30分下校となった。また、職員の勤務体制については、「自宅勤務」が推奨されるようになり、基本的には週2~3日の出勤となった。 尚、保護者が一人親や保健、医療等の勤務従事者の場合、“居場所の確保”ということで要請に応じて児童生徒を学校で預かる措置をとった。
【5月4日 『緊急事態宣言の延長』 (5月31日まで)】
対象期間の延長に伴い、臨時休校期間も5月31日までに延長された。この期間には登校日は設けないことになっていたが、やはり“居場所の確保”については同様の措置がとられた。また、インターネットを活用して、教員の自己紹介や各教科の動画作成を行い配信する取り組みを行った。しかし、多くの障害のある児童生徒にとって、直接的な関わりが持てない、やり取りができないということは、“学びの保障”に対して大きな課題となることは明らかだった。
【5月22日 段階的に学校を再開 6月1日~19日、22日より通常登校再開】
教育委員会から“彩の国 新しい学校生活 安心宣言」が示され、6月1日から登校日を徐々に増やしながら分散登校が始まった。3週目からは給食の提供も始まり、こまめな手消毒、マスクの装着はもちろんのこと、フェイスシールドや手作りのつい立などを用意し指導に当たることになった。また、児童生徒が下校した後に、教室やトイレ、遊具などの消毒作業を毎回行わなければならなくなった。児童生徒の学習に関連したことでは、集団活動(集会や芸術鑑賞会等)の禁止、夏のプール、遠足、運動会、社会体験学習などの中止、文化祭の縮小など、学校行事の見直しが余儀なくされ、年間の指導計画を大きく変更する必要が出てきた。
【授業時間の確保のため、課業日延長と夏休みの短縮】
臨時休校実施のため授業時数が不足し、補充のために1週間遅く夏休みに入り、1週間早く終了して調整した。
★コロナ禍の学校現場 (神奈川の中学校)★
(文責:江口大介)
2月27日の木曜日のことだった。前任校に卒業生への祝電を届けるため、少し早めに学校を出た。用事を終えて自宅に帰りインターネットのニュースを見ていると、首相が全国の学校に一斉休校を求めるという内容が飛び込んできた。しかも3月2日からという。というとどのようになるかと若干心配な気持ちが湧いて、翌日出勤した。すると配布するプリントを準備したり休暇中の課題を急いで作ったり、学習範囲が終わらなかった部分を報告するための文書を作ったりなど、慌ただしくその日を過ごした。
ただし3月2日から急遽休校できるわけではないので、28日は必要なプリントを配り、2日は残った教材を取りに来る日として、自宅学習の期間に入ることになった。
卒業式や修了式はどうするかということが連日各学校の校長先生、教育委員会で話し合いが行われていた。最終的に在校生と来賓は出席しない、卒業生の保護者は1名だけ、席も間隔を空ける、卒業生合唱はしないという、規模を縮小した形の式になった。
修了式はそれぞれの教室で放送による式となった。きっと4月からは通常になるだろうとみんな思っていたのだが、感染者の増加が止まらず、休校は継続となった。入学式は卒業式と同様に席の間隔を空けたり時間を短くするなどの措置だったが、新入生はその年に使 う教科書を全て持ち帰ることになった。17冊の教科書、連絡関係のプリント、自宅学習に必要なプリントなど、どっさりと重い、大量の荷物を背負って帰宅したのだ。
自宅学習はインターネットを使って問題にチャレンジできるものである。しかし全国の生徒がそのサイトを利用するため、ネット接続がとても遅いという不満も寄せられていたという。4月の段階ではいつ休校解除になるかが見通せていなかった。それは全職員がそうだったと思うし、管理職もそうだったと思う。
ゴールデンウィークが終わり休校が5月末まで延長されることが決まり、追加の課題が必要になった。それと副教材として資料集や問題集なども配らなくてはならなくなり、3学年、日日を設定して配布する書類を取りに来て貰うことになった。生徒一人一人に対応する時間は4分少々という、とてもハードな時間でのものになった。
同時に現場ではタブレット端末が配られ、各家庭も希望者にはタブレット端末が教育委員会から貸し出されることになった。インターネット環境がある家庭には、あるインターネットサイトを通じて生徒の表情が見られるように、ミーティング番号というものが割り振られた。いわゆるネットを使ったホームルームである。こちらがインターネット上に教室を開き、ミーティング番号を入力すると生徒がそこに入室できるというものである。挙手する機能もあってそれをクリックすればこちらも状況が把握できるというわけである。もちろん生徒の音声も聞くことができる。このサービスを導入し、6月から運用することとなった。それに先立ち5月の末から試して使い始めた。生徒にはその使い方やミーティング番号、注意点を告知した。2回ほど試して、6月から運用することになった。
6月に休校措置が解除されたが、分散登校としてクラスを2グループに分け、午前中はAグループ、午後はBグループというスタイルで学校が始まった。Aグループは8時半からホームルームをするのだが、午後登校のBグループはオンラインでそのホームルーム に参加する。午後登校だからといって、生活リズムが崩れないようにするため、生徒の評定確認という理由である。翌週は午前登校はBグループ、午後登校はAグループ、週ごとに入れ替えていくのだ。これを6月末まで継続し、授業は40分授業を午前午後3時間ずつ、同じ時間割で行うのだ。それぞれ生徒が下校してからは教室や学校空間の消毒作業がある。これを1日2回実施するのだ。
6月29日からは一斉登校になり、時間割も6時間、ただし授業時間は45分になった。といってもクラスで一斉に授業を受けるわけだから生徒も緊張の色を隠せない。なにしろ一つの教室にこれまで半分の人数だった生徒が、急に倍の人数になる。授業時間も5分とはいえ長くなる。そして7月13日からは授業時間も50分に戻り、おまけにその週は1学期期末試験が行われた。生徒は学校生活に慣れるかそうでないかのうちに試験を迎えたのである。
1学年の生徒ならばなおさら緊張する。なぜなら小学校の授業と違い、他の小学校から進学してくるクラスメイトと仲良くなる時間も満足に取れなかったのだ。しかも入学式で大量の教材を手にし、どんな勉強をするのだろうとやきもきしたに違いない。1学期に行われる行事は全て中止、2学期の行事も中止・縮小というこれまでに例のない状況で学校生活をスタートさせたわけだ。
学校現場でもこれまでのやり方を変化させていくことが求められている。1学期に予定されていた行事を軒並み延期・中止したことで、それまでの学習予定や方法を変更していく必要があるということだ。たとえば6月に予定されていた修学旅行に向けて現地の自然や伝統産業などを総合的な学習の時間で調べ、それをまとめていくことが、これまでの学習予定であった。修学旅行を来年に延期しているので、それまでの総合的な学習の時間をどうしていくかが手探りの状態にある。つまりこれまでのノウハウが通じないことに、みんな不安を抱いている。では新しい学習をどうするかという代案もなかなか出てこない。職員が協力して新しいことをしようという時間がないのである。新しいノウハウを築いていくためには、おそらく長期的スパンが必要になる。速新しいことを生み出していくことは難しい。とするとこれまで文科省や教育委員会が求めてきた組織力を結集させなければならないだろう。文科省や教育委員会は、ともすれば現場に対して様々な要求を出してきたのではなかろうか。それを、こんな方法はどうか、こんな行事の運営の案はどうかなど、現場を支えるような行政の力が今後大切になるのではなかろうか。要求を出すだけの管理的行政から、現場と力を合わせられるような協力的行政に転換する時期にきているかもしれない。
もちろん、障害を持つ教員がこのような動きの中に取り残されるような政策であってはならない。様々な立場の教職員を支える仕組みでなければならないことはいうまでもないだろう。そのような施策を、こちらとしても求めていかなくてはならない。
★皆野中学校の対応(新井淑則)★
2月28日 県立高校入試・3月2日 面接
・受験予定者は全員無事終了する。
・1,2年生や職員に2/27の首相の全国休校要請に動揺が見られた。
3月 6日 年度内臨時休校
・3/2~3/5の間に授業をやりつつ、1、2年生の休校中の学習プリントを作成し、配布する。
3月 9日 県立高校合格発表
・公立高校の受験者のみ、時差登校し、1時間程度で下校させる。
3月13日 皆野中学校卒業式
・卒業式参加者は、卒業生、学校職員、保護者(1家族2名まで)とし、在校生や来賓は参加なしとした。
・校歌はCDで流し、椅子の配置、消毒、マスク着用、換気など対策を徹底する。
・式は約45分で終了する。例年では90分程度。
3月16日以降
・教科ごとに未学習の部分を拾い出し、検討する。
・休校中の生徒の把握を、担任が個々に電話連絡をする。
・来年度の学校行事や校外学習の変更や中止を検討する。例えば、6月実施の3年生の京都・奈良の修学
旅行はどうするか。実施時期、行き先の変更、旅行者との調整など。最終的には、3月に京都奈良で決ま
る。
・新学期の準備に追われる。従来の準備に加えて、机の配置や教室の配置、手洗い場やトイレの距離をと
るための工夫、消毒液の配置など。
・学総体(部活の大会)の中止が決まり、3年生のメンタルケアも考えねばならない。
4月 8日 皆野中学校入学式
・入学式参加者は、新入生、学校職員、保護者(1家族2名まで)。
・感染予防対策は卒業式と同様。
4月 9日・10日 午前中登校
・1日3時間の授業を2日間実施した。
・内容は、健康監察、学級活動、教科書配布、学習プリント配布など。
4月11日 臨時休校再開
4月27日 職員の自宅勤務導入
・出勤は週1日程度、自宅勤務は勤務開始と終了を報告
5月11日~ 学年別に週1回2時間の登校日を開始
・内容は、健康観察、運動、家庭学習指導。
6月 1日
学校再開
生徒・職員の毎日の健康観察カード(朝夜の体温、就寝起床時刻、朝食)提出。マスクの着用。教室の
換気。机の間隔、トイレ、手洗い場の間隔の指示。給食の配膳、食べ方など指示。授業では、音楽の合
唱や合奏、家庭科の調理実習、理科の実験、グループの話し合いなどは禁止となる。放課後の消毒。教
育委員会の感染防止のガイドラインに基づき、徹底された。
7月 1日
部活動再開
運動時のマスク着用は解除。体育館や武道場の換気、ボールやラケット等用具の消毒の徹底。
7月13日 公立高校の入試範囲の削減を発表
7月30日皆野町3名の感染者。うち1人は小学生。
7月31日皆野小学校は臨時休校、以後夏休みに。
8月 8日 皆野中学校第1学期終業式
8月 9日~8月31日 夏休み
・部活動は実施する。熱中症対策が求められる。
・3年生は三者面談、1・2年生は家庭訪問を実施する。
9月 1日以降
・9月1日より、給食あり、授業開始。
・体育祭は縮小、文化祭は無観客で、新人戦は中止。
*会計から会費納入のお願い 文章省略
*新聞記事掲載 埼玉新聞 8月24日掲載の記事
全盲の皆野中学校教諭 新井淑則さん ラジオで、平曲披露
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