ノーマライゼーション・教育ネットワーク会員通信2019年冬号
【代表】新井淑則 【事務局】岩井隆
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11月22日 新井淑則先生が授業公開! 皆野中学校
冬が間近に迫ったような冷たい雨が降り続くあいにくの天候の中、新井淑則先生の授業見学が秩父の皆野
中学校で行われました。教育ネットが新井先生の公開授業を見学するのは、今回で12回目になります。毎
年1回の公開ですから、2008年(長瀞中学校へ赴任した年)から12年間続けてきたことになります。今
年度は11月22日(金)に実施されました。
授業を見学したのは、飯島さん・宮城さん・森谷さん・尾崎さん・勝原さん・岩井さんの6名で、会員外
では持田さんと小金さんが草加から参加されました。毎年授業を見学されている落合先生、朗読ボランティ
アの川野さんと水村さんが今年も参加されていました。さらに埼玉新聞の桜井記者が取材に来ていました。
今回見学したのは、5校時、1年1組の国語の古典の授業です。前の時間までに調べた故事成語を班ごと
に発表する授業です。授業の内容・様子・感想などは見学者の文章を掲載してあります。そちらをご覧くだ
さい。
続いて6校時には、会議室において授業を振り返る話し合いが持たれました。授業を行った新井先生・瀧
口先生と見学者の上記の12名による話し合いです。自己紹介のあと、授業の内容への質疑応答、授業や生
徒に対する感想が出されました。この話し合いを飯島さんがレポートをしていますので、そちらの記事をご
覧ください。
授業と話し合いを終えると、教育ネットの会員は長瀞元気プラザに移動して、夕食を兼ねた懇親会を行い、
宿泊しました。
翌日はその長瀞元気プラザの会議室で11月の定例会を行い、昼食後に解散しました。
[故事成語発表会]の授業を参観して
勝原 裕子
初めに、新井さんが12年間積極的に授業を公開し続けている事に敬意を表します。なかなかできることで
はありません。障害者が普通の人間として勤務できるようになればと思います。特別能力が高いとか、血の
にじむような努力をしてはじめてかなうのではおかしいと思います。
発表会は、矛盾の成り立ちを全員で朗読しました。大きな声ではっきり言えました。
まちがいを気にせず、大きな声で発表しようと滝口さんが生徒達に指示しましたが、打ち合わせの時間が
少なかったので、小さな声で口ごもってしまう生徒もいました。自信があり能力の高い生徒は、大きな声で
発表できました。
生徒達は、3,4人のグループで劇化して故事成語がどんな成り立ちからでき、どんな意味で、どんな用
例があるのか、発表しました。
発表に先立ち、新井さんと滝口さんがお手本を示しました。ぴったり息があってよいお手本になりました。
守株という言葉の説明でしたが、盲導犬のぬいぐるみをうさぎに見立てて新井さんが農夫を演じ、滝口さん
が「まちぼうけ」の歌を歌い、なかなかのものでした。
生徒達は評価カードに
○読み
○現在の意味
○評価をABCで表す
以上3点は必ず書き、必要に応じてメモを取り、用例、感想、どんな内容かを書きながら、発表を見まし
た。
1班 推敲
2班 塞翁が馬
3班 四面楚歌
4班 蛇足
5班 五十歩百歩
6班 背水の陣
7班 牛耳を執る
8班 漁夫の利
9班 虎の威を借る狐
班の数は多かったけれど、全ての班が発表できました。パネルの裏に磁石がはってあり、発表が終わる
と故事成語と意味を黒板にはり、最後に故事成語に合った意味のカードをトランプのように切り、故事成語
のパネルの下に意味のパネルを生徒に選ばせてはらせたら、9枚全て正解しました。
中学生の授業は、教師と一部の生徒との一問一答で終わってしまうのが多いように思います。受験があり、
進度を考えなくてはならないので、仕方がないかと思います。今度の発表会では、全員の生徒が前に立ち、
発表したのはとてもよいと思いました。守株の時は、うさぎに見立てられたぬいぐるみを馬に見立てたり、
紙で王冠や帽子を作ってかぶったり、ナレーターをしたり、劇中の人物に扮したり、全員が役割りを持ち工
夫して演じました。どの生徒も今回学習した故事成語は普通の授業より印象に残り、一生の財産になると思
います。
授業見学
持田健史
雨の中、おせんべいの町草加の家を出て、夜祭の国、秩父の皆野中学校に着いたのは、3時間半後、校舎
の玄関にて新井先生と盲導犬リルの出迎えを受け、ひとまず控室へ。当日の授業見学に参加する方々が集合
していた。 新井先生より、本日は中学1年生の見学であることを伺った。教室は校舎の3階、教室の最後
尾の椅子に着席。本日故事成語の授業であることを知った。二枚の小さなホワイトボードの1枚に故事成語
が書かれており、もう一枚には現代の意味が書かれてあったそうだ。3、4時限目を使ってその発表準備を行
い、1班3,4人の構成で行うと知らされ、本日の授業開始、最初は新井先生,瀧口先生による寸劇入りの模範発
表、ときに爆笑、クスクス笑いに包まれ発表終了。
これを皮切りに生徒たちの独創性豊かな発表が続く。いずれも屈託のない元気な声、それぞれの発表に拍
手で答える。普段使わない故事もあり、脳トレーニングになったと思いながらあっという間の1時限終了。再
び控室に戻り、参加者の自己紹介と感想を述べる。、この時初めて参加者の略歴を知り、殆どの方が教育ネッ
トワークのメンバーで、元教師であることを知った。私共、教育には門外漢。さかのぼること1年前、草加市
において、新井先生の講演会があり、私は仕事が入っており参加はできなかったが、パートナーの小金桂子さ
んが聴きに行き感銘を受け終了後、ロビーで盲導犬リルと一緒におられた新井先生とお会いし、自分のパート
ナーが、全盲で粘土で立体の制作をしていることを話したところ先生より、「今朝NHKラジオで、そのよう
な話を聞きました。」と言われて即座に「それです」と答えたそうだ。透かさず先生より、お話がしたいと名
刺をいただいたのをきっかけに電話での対面となる。その時草加にも支援者がいるので草加に行くことがあっ
たらお会いしたいとの話になり、それから約1年後の先月拙宅に立ち寄られ、私の作品を触れて見られたとと
もに、四方山話をする事となった。
今日の授業を振り返り、先生方お二人の息の合った授業の展開は、立体的であり、奥が深く興味をそそら
れた。多くの学校にもダブルティーチャーの授業が行われたら、人間形成の基となる種が子供たちに蒔かれ
ることとなるだろう。(教育にもっと金を使うべき)
新井先生との出会いは、私どもに真の教育の現場を見せてくださいました。大変有意義な一日でした。
新井先生の授業を参観して
宮城道雄
11月22日(金)5時限の国語の授業:故事成語を見学しました。1年1組の国語の授業で故事成語を扱い、
クラス全員が参加して推敲や塞翁が馬などの故事成語取り上げ、意味、由来、利用法を調査し考えて班ごとに
短い劇にするというものでした。全生徒32 人が9班に分かれ、9つの故事を扱うことになり、各自が頭を働
かせ班員と協力して劇を作り出さなければなりません。各々が一緒に考えないとできません。また、故事成語
使用例を発表して一班が終わりとなります。
前の授業で調べて考えたものを、この授業で班ごとに発表するものでした。最初に新井先生とパートナーの
瀧口先生の二人で模範の形を示した後で生徒の発表がなされました。
新井先生と瀧口先生の二人のティームティーチングの在り方としては、瀧口先生が新井先生の視覚障害の見
えない部分を補助しながら、二人の先生の力を十分に発揮して授業を作り上げる形ができているもので、長年
の積み上げがありスムーズな流れで授業が進行していました。新井先生が授業の主要な流れを説明し、瀧口先
生が班ごとの資 料の書き方や評価の仕方を説明していました。
各班が取り組んだことはかなりの班員の協力した準備が必要であり各生徒が調べて考える活動が求められ大変
な取り組みであったと思います。言葉を的確に使用することは結構難しいことで適切に使用していた生徒もい
ましたが、ただその故事を使ってはいるが文章になっていないものや、不適切なものもありました。
この短い1時間の中で、すべての班に発表させ、全生徒が参加できる場が作り上げられました。更に、班ごと
にプリントで評価をさせて資料を前に出させたことは大事なことでした。時間があれば故事の使い方の正しい
形まで深められればと考えられますが、次回の授業 とか今後の課題になると思います。
故事成語の授業として、単なる説明で終わるのでなく、今回のように全生徒に取り組みを実際に行わ勢田こ
とで,各生徒の自ら調べ考え工夫する場が与えられ、居眠りを許さない活動的な授業になっているので生徒に
とっては印象的記憶に刻み込まれるような時間が過ごせたと言えます。
視覚障害を持つ新井先生にとっては見えない部分を補助してくれるパートナーガ必要です。同じ国語科の先
生とティームティーチングで、二人で授業を行うことで、パートナーの瀧口先生によって見えない部分を補助
してもらえる体制ができています。更に,同じ国語科の教員が二人で担当することにより、各々の教員の力を
十分発揮して豊かな授業内容を作り上げることが可能になっています。1プラス1が2になって授業を充実させ
る実践ができているわけです。充実した授業方法です。また別の視覚障害者の教員 の場合は、別の教科の先
生がパートナーとして担当しており、主になる先生が授業の流れを組み立てが活動を生かし、考えたり発表す
る場を確保して、授業を進行させる。パートナーの先生は主になる先生の見えない部分の補助に徹した活動を
行っていることで活動的な充実した授業が実施されている事例もあります。二人で構築する授業の在り方は、
このようにいくつかの事例があるのが現状です。
研修会報告
飯島光治
授業後、研修会(50分)をしました。
参加は新井教諭、瀧口教諭の他、会員の尾崎、勝原、宮城、岩井、森谷さんと飯島(司会)会員外からは
持田さん、小金さん、落合さん(新井教諭と長瀞中学校時代からの)桜井さん(埼玉新聞)の12名でした。
研修は、前半授業の感想。後半障害者の授業の支援体制についてをテーマにしました。
前半では、毎年公開授業をしていることに、大変さと偉さを感じると二名の方からありました。またこう
いう全員参加の授業は、卒業してからも残るのではないか。授業の最初に矛盾のところを全員で朗唱し、迫
力を感じた。T1とT2の形を超え二人で授業を作っていく。質問として班はどのように編成したのか。実際
の用例で当てはまらないのがあった。班編成の説明があり、後半はお二人の教諭は承知していて事後指導す
るとありました。新井教諭によると、全員参加の授業は、珍しくないと後で聞きました。
後半について、このところ定例会で具体例をもとに話し合っており、岩井さんより詳しい説明がありまし
た。T1とT2の人間関係がうまくいかない時、どうしたらよいか。T2の障害者の方への理解、気持ちが関
係してきます。そして準備、授業の展開、テスト問題、評価等にそれぞれ関係してきます。
落合さんより新井教諭が長瀞中学校へ赴任した時のことが話されました。職場は受け入れるのか、大変と
思うのか二つに分かれる。
長瀞中学校は、受け入れた。そして私は新井教諭と接してきて変わったとありました。現在も皆野中学校へ
来ています。
翌日の定例会で、話し合いを振り返りでAさんより、人間関係を良くするために、こういうものを作って
きたと皆さんに配る。飲み会には参加する等努めてきたとありました。
難しい問題ですが、少しでも状況がよくなりますよう。
さよなら、マーリン
岩井隆
新井先生の授業公開の後、毎年のことだが、見学者と新井先生や皆野中の先生方を交えて授業の振り返り
などが話し合われる。今年は飯島さんの司会だった。まずは参加者の自己紹介、順に回って落合先生の番に
なった時だ。「マーリンが9月1日に亡くなった。15歳と15日でした。」旨の言葉を私は耳にした。
マーリンは新井先生の先代のアイメイト(盲導犬)、2014年5月にアイメイトとしては現役を引退してい
た。落合先生も定年退職されて、今は週1回ほど新井先生のボランティアをしている。長瀞中時代・皆野中
時代に新井先生とチームティーチングで国語の授業を共にしている。引退したマーリンは、その落合先生に
引き取られ、落合さんちの犬として5年ほどの余生を過ごしていた。
「15歳と15日でした。」を聞いて私はマーリンは死んだんだ。」と思った。と同時に「享年が日数ま
で分かっていることで、マーリンの余生の様子が分かったような気がした。
「ああ、マーリンはかわいがられ面倒を見てもらっていたんだ!」と思うと、不覚にも涙ぐんでしまった。
その後の何人かの自己紹介は耳に入らなかった。
10年近く前のことだが、私が新井先生と会う時は、いつもマーリンが一緒だった。そしてマーリンは私
のズボンの裾に絡みついてきた。たぶん、我が家で飼っている犬の臭いがしていたのだろう。今回のような
授業見学ではマーリンはいつも静かに寝ていたっけ。マーリンと私とのつながりは唯それだけである。が、
マーリンは私たち視覚障害者の生活を支える役割を果たしていたことは事実である。その役割を終えた後も
大切にされてきたのだろう。15歳というのは大型犬としては長寿だ。
そうしてマーリンは逝ってしまった。いくつかのエピソードを残して。合掌。
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