新井問題(3)(新井教諭、再び中学校へ戻って
(2008年度から))

 視覚障害者の受け入れ態勢として、物的、人的、心的の三条件が必要になる。長瀞中学校では、新井教諭について、物的には点字ブロック、音声信号の設置をし、人的には、国語科の加配(1名)と協力、朗読ボランティアの協力があり、心的には、長瀞町の町長と校長の理解と支援があり、体制が整備されていた。
 上記で国語科の協力の例として、テストの採点をしてもらい、成績は協議してつけている。
 本誌の「新井問題」を経過して、念願の中学校教諭になる。保護者、生徒からの心配もあったと予想される。新井教諭について以下4項目について述べる。

障害理解のために取り組んだこと

 以前からの地域での講演。年度初めの職員・生徒へ新井教諭理解の説明。入学式後の保護者への理解と協力のお願い。積極的に取材を受ける。(本誌80ページに掲載)さらに、講演を多く行う。本の出版(2冊)。テレビではドラマのモデルや担任としての1年間を追ったドキュメント等視覚障害者の社会的認知を広めた。

授業(国語)へのとりくみ

 授業について長瀞中学校では、毎日1限目に打ち合わせと放課後の反省会を2年間した。
 3年目から毎日1時限のみ実施された。これは新井教諭が働きやすい条件が整っている環境である。したがって授業は良く準備されたものである。授業の感想を、生徒に書いてもらったが、1学期は新井教諭、盲導犬に関心がいったが、2学期からは新井教諭の授業は当たり前になり、生徒自身の国語の取り組みについて書くようになった。授業は生徒に受け入れられた。

チームティーチングについて

 新井教諭をT1と固定せずに、内容や必要に応じてT1とT2が入れ替わる方式に変えた。(2010年度の公開授業はそうなっていた。)
 教育ネットは、毎年新井教諭の公開授業(国語7回、道徳1回、学級会1回)を行った。生徒は考え、発表し、読解力がついている。

学級担任として

 長瀞中学校7年目に担任になる。
 担任として毎日給食時、生徒と一緒に食べる。食べ物を教えてもらい、また、食欲の無い生徒に声をかける。文化祭では新井教諭が脚本を書き、「裸の王様」の劇をした。成功だった。
 1年間担任として、副担任とともにやり遂げた。終業式では、生徒一人ひとりに一言をいう。校長からは学級担任を要請されたときに「新任の副担任の方を担任として育ててほしい。」とあり、それに答える内容となった。

教育ネットの支援

 この9年間、毎月の定例会で新井教諭の現況を聞き、公開授業(全9回)を企画し、参加した。また新井教諭の講演会に参加した。
 なお2009年9月に、教育ネットは県の担当者と交渉する。要望として、①、2学年用の点字教科書を県費で作成してほしい。②、人的支援を今後も続けてほしい。①については長瀞町教委が作成する。②については今後も続けるとなった。この交渉には会員7人が参加する。
 最後に新井教諭の言葉として、「それにしても特に1年目は、忙しい日々をすごした。恐らく取材や授業参観も無かった1週間は、1年間で、数週であると思う。」と言っている。また長瀞中学校の7年間で「授業でぶれないのは、始めの2年間があるからだと思う。信念がぶれないのは、教育ネットの18年間があるからだと思う。」とある。
 2015年4月からは、母校の皆野中学校に転勤になった。今後の課題として合理的配慮の観点より、教師の仕事をサポートするティーチングアシスタント(TA)の方を県に要望していくことになる。